softtail.log | 自転車でのポタリング日記と自転車話+α

    なるほど旅行記ってのは

     確かに天体戦士サンレッドに登場するヴァンプ将軍が喝破した通り、一皿105円(税込)の回転寿司といえど、100円以下で売っているコンビニetcのおにぎりの満足感と比べると、実はあんまり・・・でおなじみのゆげ1号です。

     
     まぁそんな話はともかく、今回は下記の本について。

    道の先まで行ってやれ! 
    石田ゆうすけ 著
    幻冬舎

     かつて87カ国を自転車で走破した著者が、今度は日本のあちこちへ輪行で旅をしていろんな人や食べ物、景色や町並みと出会う、てな内容です。
    某自転車雑誌の連載がベースになっているようですが、自転車に関わる描写は控えめ。

     この著者を客観的に見れば、大冒険を成し遂げたすごい人なわけです。それは疑いない。
    でもこの本に描かれている、人々や食べ物との触れあいや、その土地で感じたことなんかを読む限り、この著者は「スーパーマンみたいな別世界のすごい人」ではなく、「普通の人の延長線上にいるすごい人」だな、って思います。

     確かに食べ物に対する鋭敏な感覚や、旅先で出会った人たちにするっと溶け込んでいく様、そしてそれらをとても素直に、かつ読んでいて気持ちよいテンポで綴っていく筆の達者さも含めてすばらしくワクワクするのですが、「いやぁこれは俺には無理だぁ」ってなすごさではなく、「こういうことやってみたいな」って思わせるようなワクワク感です。

     なるほど、旅行記ってのは、旅先の様子を楽しむってだけではなく、「作者という人そのもの」を楽しむ側面も大きいのだな。
    だから、この人柄の良さがにじみ出て、かつ自分達の延長にいそうなこの作者自身の「経験や感想そのもの」に、心を動かされるんでしょうね。

     いやぁ、この本、お薦めです。
    さっそく前著というか処女作で、87カ国を自転車で走破した記録「行かずに死ねるか!」も読み始めました。


     


     

     若干ネタバレになりそうなので一度区切ります。


     ところで、この本に記されている旅行先の中で、幾つか印象に残ったもの。
    それはやっぱり具体的な旅先の描写ではなく、こんな感じでした。


    ■北海道について

     作者は以前に訪れた北海道の印象と比べ、ウニの美味さや相変わらずの雄大さ、そして人々のおおらかさを存分に感じながら、一方で道路の整備状況なんかにとても人工的なものを感じて少々げんなりしているようです。
    もちろんその背景に、自然を切り開いて作られていく道路ってものに対して自身がどうしてもバイアスをかけて見てしまう、という自己分析もしっかりされてはいますが。

     
     で、北海道は我々ゆげーずの故郷なのですが、正直なところ、帰省した時に過疎化がすすんだ地域などを通ると、この街はこのまま開拓前の原野に戻っていくのか?なんて思わずにはいられない景色をまざまざと見せつけられます。


     いや、どちらが良い・悪いって話ではなく。
    立場によって景色は全然変わって写るんだな、って思いました。

     
    ■三重県の某島について

     三重県に、かつて遊郭として栄えた島があるそうな(多分ここのことかと)。

     本書でも伊勢方面への旅の一部として、この島に訪れています。そして、この島にまつわるあれやこれやの噂を耳にして期待に胸(だけか?)を膨らませながら島に渡ったときの一部始終が描かれています。

     で、地元の飲み屋のオヤジから色々と話を聞きだす(この本の作者は何処に行ってもするっと地元の飲み屋に滑り込むのです)と、まぁ今もこの街は歓楽街としての機能を持ってはいるものの、昔ほどの盛況さ、そして怪しさは失われていることが判ります。
    もちろん、本当に失われているのか、それともちょっと立ち寄っただけの旅人にはこの街のリアルな部分は姿を見せないのか、それともすげーことがあったんだけど作者が自粛したのか、それは判らないのですが、この本の描写はある意味とてもリアルだなぁって思いました。

     怪しいところに踏み込んだりしても、エキサイティングなことってそうそう起こらないですよね。


     で、この話がなんで印象に残ったか。

     実はちょっと前に読んだ勝谷誠彦の「色街を呑む」という本にもこの街は出てくるのですが、石田氏の描写とは全く違っていて「あまりに強力な色街の結界からはじき出される」様子が結構生々しく描かれています。


     いや、どちらが良い・悪いって話ではなく。
    伝えたいものが違うと、同じ場所に行っても、ここまで描写が異なるものかと。

     でも、ぶっちゃけ「勝谷さん、この島のこと、なんとか怪しく描こうと必死だったんだなぁ」って思ってしまいました(笑)


    一応念のため。
    「色街を呑む」について個人的にはオススメ本じゃありません。
    色街という異空間に漂う特有の雰囲気、「結界」を味わうために、その手の街の中にある飲み屋ばかりを飲み歩くという、なかなかテーマは怪しくて面白いのですが・・・
    なんか作者の脂っこい残念な自意識が丸出しで、読んでいてムネヤケします(笑)
    なるほど、紀行ものは作者そのものを味わう、ってのはここでも当てはまるのか。


    ■讃岐うどんについて

     香川県で何軒もうどんを食べ歩き、美味かったりそうでなかったりしながら、結局「うどんはけっきょく、うどんじゃ!」と切り捨てる作者。

     これって結構勇気のいる発言だよなぁと思いますが、確かにうどんって何軒も食べ歩くようなもんじゃないだろうって思います。
    うまい/まずいって話じゃなくて、うどんって結局炭水化物のカタマリですからね、腹にたまりまくるだろう。
    そういう意味で、石田氏の文章にはリアルさ、というか正直さから来る共感を感じます。


     でね、これを読んでから自転車生活vol.24「讃岐うどんツーリング」を読むと、この記事担当しているライター兼モデルの多聞恵美さんは1泊2日で10件以上のうどん屋さんを自転車で巡っているにもかかわらず、最初から最後までとびきりの笑顔でうどんにくちづけしているわけですよ。
    走っている距離は2日で50キロ強。
    冷静に考えると、というか自分に置き換えて考えると、これくらいの距離走ったくらいでこれだけのうどんを笑顔で食べ続けることが出来るだろうか・・・なんて思ってしまう。


     でも、これもどちらが良い・悪いって話ではなく。
    読み物としてぐっと来たのは石田氏の「道の先まで行ってやれ!」なんですが、「実際に四国へうどんツーリングしたくなる記事はどっちか?」と言われれば、どっちかというと「自転車生活」なわけですよ。
    なるほど、「作家」と「ライター」ってのは、似て非なるものなのだなぁ・・・ってちょっと思いました。
    自己表現を磨く作者と、求められるテーマの具現化に徹するライター?


    なんかもう少しうまい表現ありそうですが、残念、思いつかない。

     



     そのほかにも、読みながら色々と思いが膨らんだ話はこの本の中にいっぱいあるのですが、とりあえずここまで。

     

     

     

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    Category : 自転車本書評
    Posted by ゆげ1号 on  | 0 comments  0 trackback

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