softtail.log | 自転車でのポタリング日記と自転車話+α

    【書評】まちがいだらけの自転車えらび

    byゆげ1号
    天文台話の途中ですが、ちょっと別の話でも。


      最近、自転車関連の古本漁りがほとんど趣味みたいになってます。
    やはり味わいは刊行されてからしばらくの時を経た本に軍配が上がるのですが、新刊ものでもたまたま見つけてしまったもの、定価出してまで読みたいとは思わない(失礼)ものなんかも思わず手を出してしまうんだよなぁ。


     そんな中で入手した「まちがいだらけの自転車えらび」 エンゾ・早川 著


     先に書いちゃいますけど、この本、すげー面白いですけど古本で買うことをおすすめします(笑)


     その歯に衣着せない物言いのためか毀誉褒貶の激しい御仁が、メーカーを、ショップを、そして生ぬるいユーザーを斬りまくる。そして作家であり、自転車店店主であり、天才であり、革命家(笑)である同氏が「幸福な自転車乗り」のなんたるかを啓蒙してくださる本です。


     以下、ゆげ1号の拙い読解力に基づく感想ですからね、同書に対する正しい論評であることは一切保証されませんのであしからず。


    カーボンフレーム神話を斬りすて「クロモリに乗れ!」と一喝。

    自転車にとって大事なのはフレームよりもホイールだと喝破し、返す刀でシマノのホイールの酷さを徹底的に糾弾。

    ディレイラーはシマノが7800系デュラエース以降以下に酷いブラケット設計になってしまったかを嘆き、結局はGIOSのフレーム+カンパのコンポがベストだ、と(この本のポイントその1)。

    ユーザーも、体重80キロ以上のやつはロードバイク乗る資格なし。ダイエットして出直して来い。

    ついでに言うと、ロードバイクは選び方からセッティングに至るまで、ノウハウのカタマリなのだ。お前らがさくっと選んでいじってフィットするもんじゃあない。ちゃんと信頼の置けるショップで買え。くれぐれもネットでお手軽に購入なんてするな。そして買った店でしっかりと調整してもらえ。ウチの店はそうしている(ポイントその2)。

    25万以下の自転車が安全性、快適性、スピード、そして悦びをもたらしてくれると思うな(ポイントその3)。

    そもそも自転車にはふさわしいシーンがあるのだ。ピストで街中走ったり、BD-1で峠に来たりするんじゃない。


     まぁこんな感じの本です。もちろん、こういう結論に至るまでの主張や、雑誌とかではオトナの事情で書けない(のかどうか検証する手段がないんですけどね)裏事情なんかがぱらぱらとはさまれていて、この本における最大の読みどころはそういう「過激な部分」です。


     まぁぶっちゃけ、同氏の自転車選びにおけるこの本での主張自体は結構納得感がありました。もちろん私自身の拙い経験・知識と比べてではなく、これまでお付き合いさせていただいた、信頼している自転車店の方々がおっしゃる話と結構かぶるんですよね。それに、具体的な価格ライン(=25万)はさておき、やっぱり自転車はそれなりのオカネださないと駄目だというのも感覚的に同意できます。

     また、同氏が顧客に対して提供するフィッティング等のサービスなんかも、本当に顧客(=同氏の店で自転車を購入した『幸福な自転車乗り』のこと)を大事にしてるなぁと思います。


     まぁあれだ、この本、端的に言うと「傲慢偏屈店長の徹底的な暴言にじっと耐えながら教えを請うSMプレイ」なんです。
    よくいるじゃないですか、自転車店の名物店長にこういう倨傲を3D化したような人。
    でもってそういうSMプレイを乗り越えて「常連」という称号を手に入れることにヨロコビが存在するのも事実。たぶん。

     そういうSMプレイへの需要があるから、こういうスタンスが生き残れるんだろうなぁと思いますし、このような通過儀礼を経て形成されるコミュニティは引き締まった世界観に支配された、ある意味理想的な空間になるのだろうとも思います。
    「敷居の高さ」を演出するひとつの方法ですよね。


     じゃあ何が気に食わない(笑)のか。


     いや、別にいいんですけどね、いろんな雑誌やメーカー、販売店における「大人の事情」を揶揄したり批判したりする一方で自分が抱える大人の事情は悪びれもせずに読者に理解を求めたり、自分がヘルメットをかぶらない言い訳(というか屁理屈)を長々と述べてみたりと、とにかく人に厳しく自分に甘い姿勢が徹底してます。
     まぁそれ以外にも、自転車以外のトピックへの言及なんかは「自転車だけ語ってれば本当にすごいんだけどねぇ(生暖)」なんて思わせたり(詳しく指摘できないのはアンフェアなのでここは軽くながしますけど)、なんかここまでくると「そういうキャラを表現しきった文学作品」なのかと思ってしまうほどのキャラ立ち(笑)。これって、読んでいてかなりイラつかせてくれるのですが・・・


      ただ、ひとしきりいらっときたり苦笑したりしながらふと思ったのが、エンゾ氏のこういう物言いって「自分の意見がなかなか世の中に認められない怒り」の発露なんじゃないかと。


     自分の意見が認められない、ある意味弱者の立場におかれたとき、ついつい「表現なんてどうでもいいじゃん、俺正しいこと言っているんだから」って気持ちになってしまい、それでも判って貰えない苛立ちが故に、何かにつけどんどん攻撃的に、表現もわかりづらく、ストライクゾーンも狭く、わかる人だけわかればいいや的なスタンスになっていく。


     逆に自分が「強者」の立場に立っていると、逆に「あいつ何言ってるんだ。どんな立派なこと言っても伝わらなきゃ意味無えじゃん」って思うようになっていく。そして、だんだん口の巧い者、見栄えのいいもの、定量的に判断できるモノ(価格とか重量とか割引率とか視聴率とかね)だけが絶対だという錯覚に陥っていく。


     まぁ人にもよるんでしょうけど、こんな心のやじろべえのことがふと頭に浮かびました。

     
     どっちかに傾かないと前に進む反動が得られないときもあるのも正直なところだけど、ちゃんと自分が今どっちに傾いているか、そしてもう片方から耳を塞いでないか、ちゃんと自分の心の身だしなみを整えるときも必要ですな。

     

     でもこの本は中古でいいや(笑) 

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    Category : 自転車本書評
    Posted by ゆげ1号 on  | 2 comments  0 trackback

    2 Comments

    むるきち says...""
    この本を読んでいないのでなんともいえませんが
    ゆげさんの記事を読んだところから感じるのは
    この人、店主としてはどうなんだろうかと思います。

    確かに毎日お客様を相手にしている自分からすれば言いたいことは
    判ります。

    でもねぇ…

    それが通用する自転車屋はある意味羨ましいですね。

    まあ自分はそういう流れが嫌で自転車屋のお世話になることもなく
    リカンベンントなんてキワモノをいじっています。

    趣味は修行じゃないので…。

    よく某掲示板なんかではリカンベント乗りは自転車を知らないと
    言われてますが、だから面白いのだと思います。

    多くの人にとって自転車なんてあくまで趣味の一つなんです。
    あるいは手段の一つかな?
    ああいう人には全てなんだろうけど。
    仕事にしてプロになるとその辺の境目が判らなくなってくるんですね。

    プロに向かって説くのならともかく
    お客はプロじゃないんですから。

    愚痴を書いてお金をもらえる商売はいいなー。

    そういう自分も、少しは反省しなきゃいけないところもありますね。
    他山の石とせねば…。

    2008.11.04 06:01 | URL | #ysuzPZ9s [edit]
    ゆげ1号 says..."店主の視点って"
    見えてませんでした。

    なんか、自己満足的な自分の文章にこんなに視野を広げてくれるコメントつけていただくと、すごく得した気分です(笑)
    ありがとうございました。

    そうですよね、店主って「プロ」と「素人」と「オカネ」の難しいハザマに立ってるんですよね。でもその立ち位置を見失うな、と。

    なんか、普通のリーマン(=ゆげ)にもいえますね。
    2008.11.05 22:37 | URL | #- [edit]

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